伊勢志摩へおいないさぁ~
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寝たきりのご家族との家族旅行

こんにちは。
NPO法人 伊勢志摩バリアフリーツアーセンターの 中村千枝 です。

重度な障がいを有するご本人やご家族にも、
「旅行ができるんだ!」と思っていただけるようなエピソードを、
お客様のご了解の下、ご紹介いたします。


10月30日から11月2日までの2泊3日、
滋賀県のK様ご家族が伊勢志摩旅行に来てくださいました。

旅行のご依頼は奥様から。
50代後半のご主人と息子さん2人との4人旅行です。

センターへの問合せは9月はじめ。

ご主人が8年前に脳出血のため全身まひの状態となり、
現在は在宅介護をしているが、
旅行先で、
・介護電動ベッド(3モーター)
・床ずれ防止のエアマット
・吸引器
を客室にセッテイングして欲しいとのこと。

旅行の目的は、『家族旅行』ですが、
寝たきりのご主人のために、宿のリクエストとして
・景色の良い(海の見える)客室の窓際にベッドを置けること
・夕食は、部屋食で!
というご希望。

今まで、リクライニングベッドや、ベッドサイドに手すりがあることなどの
ご要望はありましたが、介護ベッドの搬入希望は初めて。

伊勢志摩ではリクライニングベッドがある旅館はありますが、
介護ベッドのある宿はありません。

そこで、鳥羽市内にある福祉機器を扱う業者に依頼。
電動介護ベッド、エアマット、吸引器の3つを
合計14000円ぐらいでレンタルしていただけることになりました。

次は、宿の選定です。
今回は景色の良い部屋をというリクエストでしたので、
海辺や高台に建つ旅館をいくつか選択。

当初、バリアフリールームでと考えていましたが、
トイレや風呂は使わないので、それにこだわらず、景色を優先しました。

【A旅館】 
景 色          :◎ オーシャンビュー 
部屋食かどうか?   :× 朝食、夕食とも、レストラン
介護ベッドセッティング :◎ 窓際にセッティング可能  

【B旅館】 
景 色          :◎ オーシャンビュー 
部屋食かどうか?   :◎ 朝食・夕食とも、部屋食
介護ベッドセッティング :△ 窓際の広縁に冷蔵庫や洗面所があるので、窓際には置けない。

【C旅館】 
景 色          :〇 旅館が高台にあるため、海は見えるが目の前ではない。 
部屋食かどうか?   :〇 朝食はレストラン、夕食は部屋食
介護ベッドセッティング :◎ 窓際にセッティング可能 

この3つをご提案し、結果的にはC旅館を選ばれることになりました。

そしてそして、偶然なのですが、
C旅館の経営者家族のお一人が、K様のご主人と同じ病気で現在も闘病中。

そんなご縁もありまして、
旅行当日はワタクシと事務局長、そして旅館のご家族の方とK様の客室を訪問。
セッティングしていただいた介護ベッドや吸引器の確認と共に、
双方をお引き合わせして、しばしの歓談となりました。



吸引器 → ご自宅で使用しているのと同タイプのもの。
ホースや受けは、お客様でご持参いただきました。



現在もまだ入院中のC旅館のご家族にとって、
自宅で介護されているK様の話はとても参考になるようでした。

また、同じ病気の家族を持つ者同士、
「お客様」・「旅館の方」の垣根を越えての心温まる交流があり、
同席してる我々もジーーンと感動いたしましたですよ~。

とにかくK様(奥様)は、とても前向きな方。
ご主人をご自宅で介護されるということは、
息子さんらの協力があるにしても、
本当に勇気がいる決断だったと思います。

その証拠に、K様ですら、ご主人が病気になられた当初、
ほとんど反応が無いので、その手足に触るだけでも怖かったとおっしゃっていました。

それだけに、ご主人を受け入れ、ご自宅で介護されるにあたっての決意は、
並大抵のものではなかったと思います。

その甲斐あって、ご自宅に戻ってからのご主人は、体調も安定していて、
アイコンタクトをして意思の疎通を図ったり、
発声練習をするまでになったとか。。

それもこれもご家族の愛情の賜物だと思いました。

そして、息子さんも同じ気持ちだとか。。
きっとご主人が元気な頃から、互いを思いやる家族だったのでしょうね。

旅館では、お食事の後にカラオケも楽しまれて、
ご主人のお好きな演歌を息子さんが熱唱されたとか。。

ご主人は目を大きく開いて聞き入っていたとお聞きしましたよ~


センターには、こうして様々な方から旅行のご相談があります。

最近の出来事でも、
心の病を期に、外出をためらうようになった家族のための旅行。。

しかし、「実は・・・」とお客さまから話された内容から、
そうなるきっかけとして、重大な出来ごとがあったことが分かり、
依頼者ご自身も心を痛めていらして、
だからこそ、もう一度旅行好きだった家族に、その気持ちを思い出してもらいたい!
という、大切な旅行だったことを打ち明けられ、
私も大いに心を動かされました。

旅行をするには、それぞれ理由や目的があります。
健常者でも、障がい者でも、
それが旅行本来の目的である娯楽だったり、リフレッシュだったりすることもあれば、
そこに特別な理由や目的があることもあるんですね。

そして、旅行をしたいけど、不安を感じている障がい者や高齢者はとても多いことも事実。

だからこそ我々は、お一人お一人のお身体の状態や、
旅の目的をお伺いして、
その不安を少しでも軽減できるようにと、きめ細かいご案内を心がけていますが、
一見するだけでは分かりえない様々な事情があるかもしれないことを心に留めて、
お客様との出会いを大切にしていきたいと思いました。

また、旅行は、メンバー全員が主役だと思うんです。
だから、バリアフリー情報だけでなく、
皆さんが喜んでいただけるような、プラスアルファの観光情報も添えてお伝えしています。

「どうかな?どうかな??」「どうしよう??」と心配しながら旅行するのではなく、
リラックスができ、心から楽しめる。
そして、伊勢志摩旅行が良い思い出となり、
また訪れていただけるように、
我々も情報案内に努めます!

今回のK様の問合せから、
介護ベッドが必要な方にもレンタルできることが分かりました。
これもお客様のご依頼があってこそのこと。

有難い事です!!

またのお越しをお待ちしていま~す

コメント一覧

  • えみ (2011年11月29日 13:45)

    読んでいたら目がうるんでしまいました。
    バリアフリーツアーセンターがあることで、寝たきりの方も旅行できること広めていきたいと思います。
    なによりも旅行をすることによって、家族のみんなが元気になっているところがすばらしいです。

  • 特定非営利活動法人 伊勢志摩バリアフリーツアーセンター (2011年11月29日 14:36)

    えみさん、メッセージありがとう!
    今回は、お客様からのお問合せで、旅行者のための介護ベッドがレンタルできることが分かりました。
    その後もお客様から近況報告があり、元気にしていらっしゃるそうです。
    お宿の方にとっても、忘れられないお客様になったようで、
    みんなの心に残る良い出会いを提供でき喜びを、
    しみじみ感じております。